ある老師との出会い1

気功を騙されたと思ってやってみたらいいですよー。

作家、遠藤周作がエッセイの中で書いていた文章を私は長い間忘れていたが、ひょんなことに2018年の年末に思い出し、近代医学を学ぶ者の教養として東洋医学代替療法も学んでおきたいという気楽な気持ちからだったと思う。

近所で気功を習える場所はないのかと、いろいろ検索していると、あなたにこのワザ伝授します!うん十万円といった、見るからに怪しいサイトがウヨウヨ出てきて、めちゃくちゃうさん臭い業界じゃないかと、やっぱり怪し過ぎるし気功習うのやめようかなと思ってしまう。検索してはやっぱやーめたを繰り返していると、まともそうなホームページを発見した。子供達に合気道や空手を教える傍ら、大人を対象に健康のための気功を教えてる教室があるという。月謝6千円。週に数回2時間の教室が営まれており、何回通おうが月謝は定額。教室の主催者は、企業経営を長年営んだ後引退し、現在は70の中盤を過ぎ、趣味で気に関わる教室を営んでいる。老師のブログの内容を読んでもあの胡散臭い伝授系のサイトとは一線を画し非常に地に足のついた感じがし、ここなら安心できそうだし、価格的にも地域のカルチャースクールと同等といったところで、老師の良心がそこに見られたので尋ねてみることにした。私は、この教室に2ヶ月間熱心に通うことになる。老師の何気ない言葉を吸収し貪欲に学ぼうとしてきた。今は老師の教室に通ってはいないが、この2ヶ月は私にとって非常に大きなものがあったと思う。

 

教室には近所の50代60代70代の男女が健康目的で通ってきていた。老師が教室を開いた10年前から通っている女性もいらっしゃった。2時間の教室は、前半と後半に分かれる。前半では、老師が行う体操を真似てみんなで一緒に行う。呼吸法を実践する。動禅しまーす!という流れになる。後半は毎回いろいろ教えられることが異なっており、合気道における気を使ったワザの練習や、気によるヒーリングといったものがあった。今となってはわかることもあるが、その頃、私は気についてはまったくの無知であり、その存在すら疑っていた状態だから、まさに半信半疑での、フィールドワークといったところだった。老師のいう動禅しまーす!には最初ぶったまげた。その場所で立ったまま身体にまかせてゆらゆらしてくださーい。という指示だけなのである。なに言うてるんやこの人?チラチラと、周囲の人々をうかがってみると、その場所で静止して目をつむってぶらぶら身体を動かしているようだ。なんで、勝手に身体が動いてくるんやろう?そんな動くわけないやん!とか思っていたけど、なんとなく周りを参考にしてゆらゆらしてみたりしていた。そのときは、自分の意思でなんとなく動いているだけやろうと思っていたけど。老師曰く、あなたは、すでに気が使えていますねー。気は脳で使うもんやから、スポーツみたいに身体的なトレーニングを何年も積み重ねる必要はないんですよ。使える人はすぐに使えるし、その感覚がわかってくるのに何年もかかる人はいる。人それぞれなんです。だから年数によるクラス編成は無意味なんです。はぁ。。。???あまりにも意味がわからない。とにかく6千円払ったし1ヶ月は半信半疑でも通ってみよう、変な商品勧められたりもしてないし、と。そんなこんなで教室に通って3回目くらいの時だろうか、身体が勝手に動くというのがなんとなくわかる瞬間が訪れた。なにやら、隣にいた女性の方に身体が引っ張られる感じで、女性の周りを1回円を描くように身体がまわりはじめる感じ。すぐに停止したので、まぁ気のせいかもしれないでも、あのなんだか、力が働いている感じはなんだったんだろう?と思いつつ家に帰る。そして、毎日30分くらいは教室で習った体操を健康のためにやってくださいねという老師のアドバイスを守ってじゃあ体操でもやろうかと、音楽をかけて身体を動かした瞬間、あの再来が来たわけだ。えっ???身体が勝手に動いてるんだけど???私はあまりにもびっくりして、自分が変になってしまうのではないか?という恐ろしさもあったので、すぐに老師に連絡をとった。老師曰く、「あっそうですかぁ。やめようと思えばやめれるでしょ?別に危なくないですよ。怖がる必要ないですから。」